My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
15.約束
「カノン姉ちゃん、朝だよー!」
そんな元気で可愛らしい声にゆっくり目を開けると、視界いっぱいにモリスちゃんの顔があった。
「起きたー?」
「うん、モリスちゃんおはよう」
「おはよー」
「よく眠れた?」
「うん!」
満面の笑みが返ってきて、私も微笑む。
(良かった。モリスちゃん、もう大丈夫みたい)
起き上がって気付く。
「みんなは?」
ツリーハウスの中には私とモリスちゃんしかいなかった。
ひょっとして、一人寝過ごしてしまっただろうか。
「今、朝ごはんの準備してるよ」
それを聞いて私は焦って髪を纏めドアを開けた。
「遅えよ」
朝日の眩しさに目を瞬いていると低い声が聞こえた。ラグだ。
「ごめん、おはよう!」
するとラグはのそりと立ち上がり、いつもの不機嫌顔で私を見下ろした。
「飯食ったらすぐに出発するからな」
「うん。そうだね」
今日この島を発つことはわかっていたことだ。やはり寂しい気持ちはあるけれど、すっきりとした気分で頷くことが出来た。
と、そこで気付く。
「あ、それ」
彼の額に新しい布が巻かれていた。
「あぁ、昨日アルの奴が買った服を破ってな」
そういえば、すっかり忘れていたけれど、昨日アルさんは私たち3人に服を買ってくれたのだった。――額に巻かれたその布が、彼に似合わず少々派手目なのはそのせいか。
折角買った服を破られたアルさんの気持ちを思うと少し気の毒だったが、あの時仕舞ったままのビキニのような服を思い出し、私はこっそり苦笑した。
(多分、私も着る機会ないだろうなぁ……)
「いいなぁカノン姉ちゃん」
「え?」
視線を落とすと、モリスちゃんが私とラグをなぜか羨ましげに見上げていた。