My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
(きゃああああああー!)
思わず心の中で歓声を上げる。
「ツェリ!?」
ドナの顔が真っ赤に染まる。
そして聞こえてきた王子の第一声に皆が驚く。
「一緒に行こう、ドナ」
「な、何言ってんだ。無理に決まってんだろ? アタシなんかが」
「離れたくないんだ。ドナと、ずっと一緒にいたいんだ!」
「アタシだって……」
離れたくない、そう続けるのだと思った。
でもドナはそこで一旦口を噤むと、違う言葉を口にした。
「いつかツェリが立派な王様になってさ、それでもアタシのこと覚えてたら……その時も、まだアタシが必要だったら、迎えに来てくれよ」
(ドナ……)
その表情はとても綺麗で、でも今にも崩れてしまいそうで、見ていて胸が痛かった。
「そんなの、いつになるかわからないじゃないか! 王になれるかどうかもわからないのに!」
王子が声を荒げる。
「なれるよ、お前だったら」
ドナは王子の腕をやんわりと外して言う。
「アタシ、王様とか役人とか偉い奴らって大嫌いだったけどさ、お前に会って変わったんだ。だから最初王子だって聞いても信じられなかったけど」
ドナはふっと笑って続ける。
「全然偉ぶったりしないし、こいつらと一緒になって子供みたいに遊んでさ。全然王子様っぽくないんだもんな!」
モリスちゃんとトム君、そしてアドリ―君とリビィ君が笑顔で頷き王子を見上げた。
――そんなふうに楽しげに遊ぶ王子の姿は私には想像がつかなかったけれど、子供たちの表情を見ていれば、この一ヶ月が彼らにとってどんなに楽しいものだったかわかる気がした。
「確かに貴方様は王子らしさに欠けるかもしれません」
そう話に入ったのはクラヴィスさんだった。
王子がそんな彼を睨みつける。
「クラヴィス……。なんだよ、そんなの今更だろ。だから僕は」
「ですが、そんな貴方様を王に推す声が、今国中で高まりつつあることをご存じですか?」
「え?」