My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
その口髭の男の人は突然入って来た私達を一瞥し口を開いた。
「なんだ。お前さんら決闘は見ないのか?」
「訊きたいことがある。盗賊の根城はどこだ」
ラグが言うと、男はやはり立派な眉を寄せラグをじろじろと見回した。
「お前さんも傭兵なのか? クラスは」
「違うんです! 囚われてるっていう金髪の男の人が私たちの知り合いかもしれなくて!」
私が言うと、口髭の男は急に呆れ顔になってひらひらと手を振った。
「やめておけ、素人がわざわざ死にに行くようなもんだ。聞いたろ、凶暴なモンスターが出るって。今勝った傭兵が戻ってくるのを大人しく待ってりゃ」
「いいから早く教えろ!」
とうとうラグが怒鳴り声を上げた、と同時、外からどよめきと共に先ほどとは明らかに種類の違う歓声が聞こえてきた。
何事かと振り返ると丁度バタバタと詰所に入って来た人がいた。髭の男と同じ服を着た、しかし髭の男に比べ大分歳若い男だ。
「今飛び入りでまた1stの傭兵が! しかも女性の!!」
「え!?」
興奮して途切れ途切れの男の言葉に私は思わず声を上げていた。
そしてこの時気づいたのだ、セリーンとアルさんがこの場にいないことに。慌てて詰所を出るがやはり見回しても二人の姿は無い。
恐る恐る背伸びし騒ぎの中心を見て、――見つけてしまった。
(セリーン……!)
そう、彼女が先ほど勝負に勝ったと思われる傭兵の前に悠然と立っていた。