My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
相手は想像よりずっと若く、セリーンやアルさんと同じほどに見えた。さっぱりとした短髪で、セリーンと同じく傭兵にしてはとてもすっきりとした格好をしていた。彼も彼女と同じ1stの傭兵。軽装備でも自分を守れる強さを持っているのだろう。
細身の長剣を手にし、この場に似合わない爽やかな笑みをたたえたその立ち姿からは気品すら感じられた。
「私はクラヴィス。貴女は?」
「セリーンだ」
「セリーン、美しい名ですね」
その話し声が聞こえてきたのは彼が話し始めた途端、観衆が静まったからだ。
「本当に良いのですか? 女性と言えど手加減は出来ません」
「あぁ、勝たなければならない理由があるのでな」
「……わかりました」
両者が剣を構え、再びわっと群衆は興奮に沸き立った。
「カノンちゃん!」
聞こえてきたアルさんの声に視線を移すと、丁度人垣から彼が抜け出てくるところだった。
「アルさん! セリーンなんで!?」
「っと、止めたんだけどさ、セリーンどうしてもそのモンスターとラグをもう一度戦わせたいみたいでよ」
言われてすぐに理解する。
もし本当にエルネストさんに会うことが出来たら、ラグは確実に呪いを解いてもらうだろう。そうするともう小さなラグには会えなくなる。
彼女にとっては、あのモンスターと盗賊達が“愛しの子”に会える最後のチャンスかもしれないのだ。
「でも、あの相手の人凄く強いんですよね?」
「1stってだけあって、さっきの闘い方見てもかなりの手練れだってわかったぜ」
「セリーンこの間大怪我したばっかりなのに……。さっき負けちゃった人はどうなったんですか?」
だが、その答えは大歓声に掻き消えた。