My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
――両者の剣がぶつかり合う。
セリーンは相手の剣を上手く受け流しそのまま大きく斬り上げる。しかし相手は身体を反ってそれを避けきり裏刃で彼女の腹を狙った。あっと声を上げそうになるが、セリーンの剣がそれを受け止める方が早かった。彼女は声を張りその剣を薙ぎ払い後ろに飛び退く。
見ているこちらは気が気でないが再び対峙した両者の顔にはまだまだ余裕があった。クラヴィスと名乗った男の方は楽しんでいるようにさえ見える。
フィエールと闘ったときはその場の狭さがネックになったのだと私は考えていた。ここなら邪魔なものが無い分、彼女はフルに自分の力を発揮できるはずだ。
心配なのは、あの大怪我からまだ一週間経っていないこと。
「いざとなったら俺がぶっ飛ばしてやるからな、セリーン」
隣からそんな声が聞こえてきた。
「アルさん。さっき負けた人ってどうなったんですか? まさか」
「いや、寸止め。相手も潔く負けを認めたんだ」
「じゃあ、本気で斬るってことはないですよね?」
「わからねぇ、こればっかりは」
そこでアルさんは口を噤んだ。再び二人が剣を交えたからだ。
先ほどよりも早く連続した金属音が辺りに鳴り響く。相手が斬り下ろせば斬り上げ、横から来た刃を薙ぎ払い振り下ろす。
素人目だが互角の闘いに見えた。
二人の真剣勝負にいつの間にか辺りの喧騒が止んでいた。すげぇ……、そんな掠れ声が時折聞こえてくる以外は、剣のぶつかり合う音のみがこの場を支配していた。だがそんなときだ。
「止めだー!!」
背後からそんな大声が飛び出した。