My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「何がだ」
「何が、って……」
こちらを見ずに言われて言葉に詰まってしまった。しかし、
「ああでも言わないと、あいつら絶対について来るだろうが」
そう、いつもの調子で答えてくれた。
(ってことは、本気じゃなかったってこと、だよね?)
――良かった。私は心底ほっとした。
額の汗を拭って小走りで彼の横に並ぶ。道幅はかなり狭まっていたが、二人並んで歩くにはまだ少し余裕があった。
「なんでついて来て欲しくなかったの? アルさん凄いショック受けてたよ、さっき」
出会ったばかりのクラヴィスさんと解呪を阻止すると常に言っているセリーンは解る。だがなぜ力になってくれそうなアルさんまで止めたのだろうか。
「……めんどくせぇ」
「え?」
そう言ったきり、彼はそれ以上続けようとはしなかった。
理由を言うのが面倒なのか、それともアルさんが面倒という意味なのか私には解りかね、仕方なく話題を変えることにした。
「本当にエルネストさんなのかな」
「さぁな」
「さぁなって……」
「あの野郎が菓子泥棒如きに捕まるようなタマか?」
「……で、でも、じゃあなんでそんなに急いでるの?」
「金髪なのは確かなようだからな。別人だったとしても何か情報が手に入る可能性は高い。まぁ、本人に越したことはねぇが」
「金髪ってだけで?」
どうも解らなくて私は訊く。するとラグも同じような顔で私を見てきた。
「何言ってんだ、金髪なんてそうは……あぁ、お前の世界じゃ珍しくねぇってことか」
ラグのその言い方に私は驚く。