My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
焦る。
銀のセイレーンだということがばれてはまずいことは私にもわかっている。
でも彼女は今銀のセイレーンではなく、「セイレーン」と言った。
セイレーン――歌を使うという術士。
現在では“銀のセイレーン”の伝説のせいでほとんど居ないようなものだと以前ラグが言っていた。歌が不吉とされたこの世界で歌を使う術士が普通に暮らしていけるわけがないと。
それなのに、私を見る彼女の目は恐れや嫌悪では無く、なぜか期待に満ちているように見えた。
「そうなんだろ? だってさっきこいつ“眠らせろ”って、歌でアタシ達を眠らせろって言ったもんな!」
「え、えっと」
完全に聞こえていたらしくラグを指差しながら彼女は言う。
私が答えに窮しているとラグが苛ついた声を上げた。
「答えるのはこっちの質問に答えてからだ」
「なんだ?」
途端ぱっと視線を移した彼女に驚いたのかラグは一拍置いてから続けた。
「お前らのところに金髪の男がいるだろう。そいつに会わせろ。話がしたい」
「あぁ……やっぱり、そうか」
彼女は視線を落とし胸元の笛をぎゅっと握った。――その表情はなんだかとても悲しげだ。
それから彼女は自分の中で何かを決心したように再びしっかりと顔を上げた。
「わかった。……でもその前に」
彼女の視線が私の方に戻ってくる。
「お前がホントにセイレーンなら、頼みがあるんだ」
「頼み?」
私が繰り返すと彼女は神妙な顔で頷いた。
「歌って欲しいんだ。子守唄を」
私は目を見開く。
「“眠らせろ”って、子守唄のことなんだろ?」
「……子守唄を、知っているの?」
声が震えてしまった。
すると彼女は初めて笑顔を見せてくれた。
「やっぱり、お前もセイレーンなんだな」
「お前も?」
驚いたように声を上げたのはラグだ。すると彼女は嬉しそうに続けた。
「あぁ。うちのばあちゃんがセイレーンだったんだ」
「あなたのおばあちゃんが!?」