My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「寝たのか?」
私が梯子に足を掛けると、すぐ下で待機していたラグがこちらを見上げ訊いてきた。
私は笑顔で頷いてから慎重に梯子を下りていき地面に足を着けた。
「ぐっすり寝てくれたよ! ……ちゃんとバレないようにしたから」
小声で言う。
するとラグは安堵したように小さく息を吐いた。
「で、中にいたのか?」
「え?」
「金髪の男だ」
イラついたように続けた彼に、そうだったと慌てて答える。
「ううん、いなかった。人を閉じ込めておくような場所も無かったし」
棚はあったが、大の大人が入れるようなサイズでは無かった。
「あの女は?」
「ドナなら今下りてくると――」
そう言いながら見上げると、丁度ドナが梯子に足を掛けたところだった。
「さっきは悪かったな」
地面に下りてすぐにドナはラグに謝った。ラグは案の定何の反応もしなかったが、ドナは特に気にする様子なくすぐに私に視線を移した。その顔はとても明るい。
「モリスのあんな寝顔久しぶりに見たよ。ありがとう、カノン」
「ううん、私もちゃんと歌えてほっとしてるとこ。本当に良かった」
言うとドナはハハっと笑った。と、そこへ不機嫌そうな声。
「で、金髪の男ってのはどこにいるんだ」
「あぁ、そうだったな」
ラグのつっけんどんな言い方にもドナは特に気分を害した様子無く答える。
――ただ、その顔が少し翳ったのを私は見逃さなかった。
「約束だからな。ちょっとここで待っててくれな!」
笑顔で言って、ドナは畑のあった方へと走り出した。
目の前の大樹に隠れすぐにドナの姿は見えなくなる。どこに向かったのか気になったが、待っててと言われたからには動かない方がいいだろう。
それよりも、もうすぐ金髪の人に会える。――そう思ったらゴクリと喉が鳴っていた。
もし本当にエルネストさんだったらやっと帰れるのだ。元の世界に。