My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「なんか、ドキドキするね」
胸を押さえながらラグを見上げると、返答より先に舌打ちが降って来た。
「やっぱあの野郎じゃねぇな」
ドナが去った方向を見ながら悔しげに言うラグ。
「え? でもまだ違うって決まったわけじゃ」
「こんな簡単に会えるんならわざわざ助けに来いなんて言わねぇだろ。……このオレに呪いまでかけてよ」
その憎々しげな声に次の言葉が出ないでいると、ねえ、と頭上から声が掛かった。
見上げるとデッキからアドリー君とリビィ君が並んで顔を出していた。
長い髪をひとつに結んでいるのがアドリー君で、天然パーマなのだろうクルクルの短髪なのがリビィ君。私はそう覚えていた。
「ドナ姉ちゃんは?」
そう言ったのはアドリー君の方。彼は自分のことを「おれ」といい、リビィ君より強気な性格のよう。
「ドナなら金髪の人のところへ行ったよ」
答えると二人は困ったように顔を見合せた。
「どうしたの? モリスちゃん起きちゃった?」
二人の表情に不安になって訊く。だが二人共ふるふると頭を横に振った。次に口を開いたのはリビィ君の方。
「モリスはぐっすり寝てるよ」
「ならいいんだけど、どうかした? ドナすぐに戻ってくると思うけど――」
丁度そう言って視線を戻した時だ。
ピイィー! と、あの笛の音が聞こえてきた。
これまでに聞いた音よりも若干低かったように思えたけれど、あの笛の音に間違いない。
「どうしたんだろう」
私は呟く。
ドナがあの笛を吹いたということはあのモンスターを呼んだということだ。
だがやはりここからではドナの姿は見えない。
「まさか、自警団の人達がまた……」
咄嗟にそう考えラグを見上げると、彼は眉を顰めその場から歩き出した。
「ちょっと見てくるね」
上にいる二人に声を掛け私もその後に続く。
樹をぐるっと周り畑の前に出たところでラグはぴたりと足を止めた。私もその理由に気付き息を呑む。
前方からドナが早足で歩いてくる。そして彼女のすぐ後ろに、金髪の人がいた。