My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「ねぇラグ、案外ここでエルネストさんの情報が手に入るかもしれないし、一応街の人に訊いてみようよ」
「言われなくてもそのつもりだ」
その背中に冷たく言われてしまい私はこっそり口を尖らせる。しかしそうしていても仕方がないのでセリーンの方を向いて話を戻した。
「ビアンカとお別れしたら、やっぱり船とか使うことになるんだよね」
「クレドヴァロール大陸に着いてしまえば他の国への移動は随分楽になる。まぁ、また他の大陸に移動するのであれば船を使うことになるだろうが」
「そっかぁ。そういえばレヴールって大陸いくつあるの?」
「今は4つだ」
「今は?」
「あぁ。世界は広いからな。ひょっとしたらこの旅の間に新大陸を見つけてしまうかもしれないぞ」
言われて納得した。
魔法のような不思議な力は存在するのに電気はまだ無く地球で言う中世期を思わせるこの世界。
見つかっていない大陸が複数あってもおかしくはない。
「船旅って大変そうだし、早くエルネストさん見つかるといいね」
「私はこのまま永遠に見つからなければいいと思っているが」
「そ、そうだったね」
慌てる。そういえばセリーンはラグが呪いを解くのを阻止するためにこの旅に加わったのだった。
距離的に考えてラグにもこの会話は聞こえているはずだが、彼は敢えて聞こえないふりをしているのか、それとも耳に入らない程にアルさんに腹を立てているのか何も言ってはこなかった。
「だがカノンが早く元の世界へ戻れるよう願ってはいるぞ」
「!」
「その意味では早くあの男が見つかるといいな」
「うん、ありがとう。セリーン」
心がほんわかあたたかくなってお礼を言う。でも、
「――しかし、そうなったらカノンとは二度と会えなくなるのか。それはそれで寂しいな」
そう言って目を細めたセリーンにチクリと胸が痛んだ。