My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
凝視する私に流石に気付いたのか、彼が初めて私に視線を向けた。
「なに?」
「え!? あ、ごめんなさい、なんでもないです!」
その鬱陶しげな目つきに私は慌てて謝る。すると彼はすぐにその視線をドナに戻した。
彼はやはり高貴な身分の人なのだろうか。おそらく年下だと思うのだが妙な威圧感があった。――と。
「なんでもなくねぇだろうが」
「え?」
横から降ってきた苛ついた声に顔を上げると、ラグが真剣な面持ちで金髪の彼を見据えていた。そしてゆっくりと口を開く。
「エルネストという男を知らないか? あんたと同じ金髪で、どこかに幽閉されているらしいんだが」
ラグもやはり彼を高貴な人だと感じているのだろうか、心なしかいつもの彼より口調が丁寧だ。
彼が先程、エルネストさん本人で無くとも何か情報が手に入るかもしれないと言っていたことを思い出し私はごくりと喉を鳴らす。
だが金髪の彼はちらりとラグを一瞥しただけですぐに視線を外し、冷たく答えた。
「知らないね」
――あ、ヤバイ。
ラグの眉がぴくりと跳ね上がるのを横目で見て思わず肩を竦める。
「本当に――」
ラグが案の定先ほどよりも大分低い声を出した、そのときだ。
「呪いの掛かった人間の近くにあまり居たくないんだ。用が済んだならさっさと帰ってくれよ」
「え!?」
知らず声を上げてしまっていた。ラグも同じように驚いた顔。
それはそうだ。彼とは今会ったばかりで、子供になったところを見られたわけでもないのに――。
「呪い? え?」
ドナだけが戸惑うように私たちを見回している。
「……なんでわかった」
ラグのその絞り出したような低音に金髪の彼はもう一度不快そうにこちらを見た。
「それだけ強力なモノどこでかけられたのか知らないけど、あんたよく生きてるね」
(え……?)
嫌悪感を露わにしたその言い方に私は目を見開く。
――どういう、意味……?