My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「なんだ? 今大事な話してんだ。後じゃダメか?」
ドナがラグたちを気にしつつ笑顔で訊く。だが二人はすぐには答えない。お互い顔を見合せ言おうかどうしようか迷っているふうだ。
そういえば二人は先ほどもドナを捜していた。二人の不安げな表情になんだか嫌な予感がした。
そしてアドリー君が思い切ったように口を開く。
「トムが、街に下りたまま帰ってこないんだ」
「――は!?」
ドナが一拍開けて、素っ頓狂な声を上げた。
(トムって、確かモリスちゃんのお兄さん、だよね)
先ほど二人は彼が水汲みに行っているとドナに伝えていた。あれは嘘だったということだろうか。
「だって、お前らさっき――」
ドナも混乱したように言う。
「トムが言ったんだ!」
アドリー君が強い口調で続ける。
「すぐに戻るって、ドナ姉ちゃんには水汲みに行ったって言えって」
「でも、帰ってこないから……っ」
リビィ君の方は今にも泣き出してしまいそうだ。
ドナの顔が焦りへと変わる。
「いつからだ」
「ドナ姉ちゃんが見回りに行ってすぐだよ」
「……わかった、お前らはモリスを見ててくれ」
そのただならぬ雰囲気に私は口を開きかけたが、
「カノン悪い、アタシちょっと街まで行ってくるから話の続きはコイツから聞いててくれ!」
早口で言うと彼女はすぐさま走り出した。更には、
「ドナ! 僕も行くよ!!」
そう声を上げ金髪の彼までもがドナを追いかけ駆け出してしまった。