My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「――あ、そうだ。街に行けばセリーン達もいるし、ひょっとしたら何か知ってるかも!」
事情を話せば、セリーンとアルさんならきっと力になってくれるはずだ。
「とにかく一度街に下りて様子を――あ、でもモリスちゃんたちだけで平気かな? あ、でもツェリがいるし……って、いないね。そういえば」
考えてみたら先ほどからずっとその姿を見ていない。
と、ラグが呆れたように溜息を吐いた。
「主人を追いかけて行ったんだろうよ」
「え……、じゃあやっぱり私達はこっちにいた方がいいのかな?」
迷いかけた、丁度そのときだ。
すでに暗闇に包まれた森の中からツェリが姿を現した。
ドナから戻れと言われたのだろうか、心なしかそのシルエットが寂しげに見えた。
「ツェリ!」
私が呼ぶとツェリはなぜか酷く驚いたように顔を上げこちらに視線を向けた。だが、すぐにふいとその視線は逸らされ、そのまま私たちの傍らを素通りし大樹の前に行儀良く座り込んだ。
今来た森の方をじっと見つめるその姿を見て、やはりモリスちゃん達を護るために戻って来たのだとわかった。
「あのね。私たちも今街に行こうって話をしていたところなの。少しでもドナの力になれたらと思って」
ドナの言うことをちゃんと理解していたツェリ。きっと私の言葉もわかってくれるだろうとそのまま続ける。
「モリスちゃん達のことお願いね」
視線を合わせてはくれなかったけれど、ツェリがいればモリスちゃん達は安全だろう。
「行こう、ラグ」
「あぁ」
――そうして、私たちはこの場を後にしたのだった。