My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
夜の山道を下るのは思いの外大変だった。
ちらちらと見える街の灯りが目印となって行き先は見失わずに済んだけれど、目を凝らし足元に良く注意しなければ落ち葉や木の根に足を取られて転んでしまいそうだ。
きっと山の中に住んでいるドナ達はすいすいと街に下りてしまったに違いない。
私たちが行って何が出来るかはわからないけれど、それでも急がなければと私は前を行くラグに必死について行っていた。
「ぶぅ?」
ブゥが小さく鳴いたのはそろそろ山道も終盤で丁度ほっとしかけたときだった。
先行くラグの頭を離れ真っ暗な茂みの向こうをじっと見つめたブゥに、なんだろうと同じ方を見ようとした――のがいけなかった。
「きゃっ!」
根か何かに躓き、あろうことかすぐ目の前にあった木の幹に顔面から思いきり突っ込んでしまった。
「~~っ!?」
「おい、平気か?」
額を押さえてしゃがみ込んでいるとラグが呆れたふうに寄って来てくれたが、すぐには答えられないくらいに痛かった。
ブゥもそんな私の顔を心配そうに覗きこんでくれている。
「ご、ごめん。注意、してたんだけど……っ」
「見せてみろ」