My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
そう言われ額を押さえていた手を恐る恐る外しラグを見上げる。すると彼はすぐに眉をひそめた。
「そ、そんなに酷い? 割れてる、とか」
焦る。今すぐ鏡が欲しいと思ったが、逆に無くて良かったかもしれない。
「割れてやしねぇが……。ちっ、仕方ねぇな」
「っ!」
急に彼の手が額に当てられ、その痛みに思わず目を閉じる。
「癒しを此処に……」
(あ、)
ラグの掌から熱いくらいの熱が伝わって来る。むずむずとした痒みを感じた頃、ゆっくりと手が離れた。
「ったく、気をつけろよな」
聞こえたのは子供の声。目を開けるとそこには小さなラグがいた。
「うん、ありがとう」
額に触れてみるがもう痛みは感じなかった。傷も綺麗に消えているみたいだ。
ブゥが嬉しそうにくるりと回転してラグの頭に着地するのを見ながら、私は改めて彼の力に感動を覚えていた。
「ほら、手」
「え」
小さな手が伸びて来て驚く。
「そのかわり、オレまで巻き込んでコケんじゃねぇぞ」
「き、気をつけます」
苦笑して、私は立ち上がりながら彼の手を取った。
――その手の大きさに、ふいに初めて会ったときのことが思い出された。
小さいけれど、頼もしいと感じた掌。それは今も変わっていない。
でもその姿が呪いのせいだと知った時には本当に驚いたものだ。
慎重に進み始めたラグについて行きながら私は訊く。
「ねぇ、ラグ。さっきあの金髪の人、ラグのこと良く生きてるねって言ってたでしょ。あれってどういう意味?」