My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「お前らが行っちまったあと偶然に知り合ってな、丁度いいから家まで案内してもらったんだ。な」
頭に手を乗せたまま、アルさんが彼に気さくに笑いかける。
「ってことは、全部見てやがったのか!?」
「残念だったな~、人違いだったんだろ? まぁ、そう上手くはいかねぇよな」
「良かったな~、人違いで。こうしてまた逢えたしな~」
対照的な二人の言葉に小さな身体がぷるぷると震える。
「お・ま・え・ら~~!!」
「ねぇ!」
私はその会話に割り込むようにして声を上げた。
確かにセリーンとアルさんが隠れて見ていたことには驚いたけれど。
「トム君はここにいるってドナ達に伝えなきゃ! ドナね、トム君が街に下りたって聞いて捜しに行っちゃったの!」
最悪彼女は自警団の詰所に乗り込むつもりかもしれない。
すると、トム君もはっとしたようにアルさんを見上げた。
「そうだよ兄ちゃん、ドナ姉ちゃん早く追いかけねーと!」
その言葉から、彼らもドナ達が街に下りて行ったのを見ていたのだとわかった。
「あ? あぁ、そうだったな。ほら、セリーン行くぞ。ラグもいつまでおいしい思いしてんだよ」
「誰がだ! おい変態、行くって言ってんだ! さっさと放しやがれ!!」
「心配するな。ちゃんと抱っこしてってやるからな♪」
そしてその言葉通りセリーンはラグを抱きしめたまますくと立ち上がり、満面の笑みで進み始めてしまった。
「自分の頭を心配しろアホーーーー!!」
宙ぶらりんになった足と腕をばたつかせて大声で叫ぶラグ。
そんな二人の後を足元に十分注意し追いながら、私はアルさんに訊いた。