My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「あの、いつから見ていたんですか?」
「ん? カノンちゃんが小屋から出てくる少し前」
「じゃあ本当に、ほとんど全部見ていたんですね」
「まぁ、さすがに会話までは聞こえなかったけどな」
にっこり笑ったその横顔を見ながら、私は声を潜め訊く。
「……さっき、ラグがついてくるなって……あの言葉、信じなかったんですか?」
――ついて来たら街を消す。
あの言葉を彼はどう思ったのだろうか。
「ん、あぁ」
アルさんは未だ怒声の響いてくる前方に視線をやり、目を細めた。
「あいつは、んなこと出来ねぇよ」
そのあたたかな声音に、やっぱりこの人はラグの先輩なのだと、なんだか嬉しくなる。
「まぁ、あいつがあんなこと言っちまうほど追いつめられてる理由は気になるけどな」
(追いつめられてる、理由……)
私もその視線を追って前方を見つめる。と。
「――あ、そうそう、クラヴィスの奴もついさっきまで一緒だったんだぜ」
「え!?」
そこで私はクラヴィスさんの存在を思い出した。
そうだ、アルさん達と別れたとき、彼もあの場にいたのだった。
「あいつ金髪の男に興味があるって言ってただろ? 詳しく訊いたら、あいつも金髪の男を捜してんだと。カノンちゃん達が捜してるあの金髪兄ちゃんとはまた違うみてーだけどな。まぁ結局あっちも人違いだったみてーで、そうとわかったらさっさとどっか行っちまった」
「そうだったんですか……」
セリーンと互角に闘った、爽やか笑顔の似合う傭兵さん。
(彼も、金髪の人を捜してるんだ)
人違いだとわかって、きっと私たちと同じように肩を落としたに違いない。