My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
7.ツェリ
「ラグの奴すっげぇ怒ってたな!」
今さっき通った道を走って戻りながら、なんとも楽しげに笑うアルさん。
ラグが怒るのも当然だ。まるで人質のように置いてきてしまったのだから。
「でも大丈夫でしょうか。多分もうすぐ元に……」
後ろを気にしながら訊くと、それにもすぐに明るい答えが返って来た。
「大丈夫大丈夫! あいつならうまくやるって!」
アルさんがそう言うとやっぱり大丈夫な気がしてきて、そんな彼の明るさが今の私にはとても頼もしく有難かった。
「ところであのドナって子、なんであんなに怒ってたんだ?」
瞬時に先ほどのドナの顔が頭に浮かぶ。
「……私が、ちゃんとドナに話さなかったのがいけないんです」
私はアルさんに彼女と出会ったときのことを話した。
あの時もドナはこちらを強く警戒していた。でも私達を信頼して受け入れてくれたのだ。それなのに……。
「そうだったのか。じゃあ誤解解くためにも早く追いつかないとな」
「はい。――あ、そうだアルさん、ツェリ……モンスターのことで何か良い考えがあるんですか?」
「え?」
「え? さっきなんとかしてくるって」
確かに髭の男にそう言うのを聞いたのだけれど。