My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「よく眠れた?」
「うん!」
思った通り、その笑顔はとても可愛らしかった。
私はそんな彼女に優しく言う。
「あのね、今ドナお姉ちゃんと大事なお話をしてるんだ。もう少しおうちの中で待っててくれるかな?」
いくら元気になったとはいえ、モリスちゃんがアルさんや剣を携えたクラヴィスさんを見てしまったらまずいだろう。
「わかった! ドナ姉ちゃん、お話終わったらみんなでご飯にしよう。モリスお腹減っちゃった!」
「あ、あぁ」
ドナが戸惑うようにそれでも答えると、3人は顔を引っ込めた。
「はいはいはい。これでカノンちゃんが嘘ついてなかったってわかっただろ? ドナ姉ちゃん」
言いながら私の元へ歩いてきたのはアルさんだ。
それまでずっと黙って事の成り行きを見守っていた彼はドナをまっすぐに見据えた。
「とりあえずさ、ドナ姉ちゃんはちょっと落ち着けって。トムもびっくりしてるぜ?」
ドナははっとしたように背後を振り返った。
戸惑うトム君にアルさんは笑顔で言う。
「トム、モリスちゃんとこ行ってやりな」
するとトム君はドナを気にしながらもしっかりと頷いて駆け出した。
それを見送ってからアルさんは続ける。
「さっきの詰所でもさ、家族が心配だって気持ちはわかるぜ? でもあれじゃ、せっかく勇気出して謝ったトムの気持ちが台無しだぜ」
今度は、ドナが言葉を失っていた。
「っと、その前にだ」
アルさんがひょいと体の向きを変える。
「お前さんは、一体何しにここに戻ってきたんだ?」
アルさんはツリーハウスの真下に一人残っているクラヴィスさんに訊いた。