My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

 クラヴィスさんは大声を上げてしまったことを恥じるように咳払いひとつしてから私たちの方を見た。

「失礼しました。つい……」
「いや。あのさ、俺にはお前さんが話してる相手があのモンスターに見えるんだが」
「……はい。私はあの方に用があるのです」

 はっきりとそう答え再びツェリを見つめるクラヴィスさん。と。

「ツェリ。もう終わりだってさ」

 ドナが静かに言った。
 彼女は徐に首にかかった笛を外し、皆が見つめる中その突起を口に含んだ。

 ピィーーっ

 聞き覚えのある澄んだ音色が夜の山に高く響く。

 ――次の瞬間、驚くべきことが起こった。
 ツェリの身体がみるみる人間の姿へと変化していく。

(えぇ――!?)

 それはまるで、ラグが子供の姿から元の姿へ戻るのを見ているようだった。

 そして、あんぐりと口を開ける私とアルさんの前に現れたのは、あの金髪の彼だった。

 ツェリの象徴とも言えるあの額の角も消え、それがあった場所にはエルネストさんのものと似た紋様が残る。
 ラグの変身で免疫が出来ているとはいえ、私はしばらくの間目の前で起こったことを受け入れることが出来なかった。

 後ろで、ざっと地面を擦る音がした。

「ツェリウス殿下。ご無事で何よりです」

 見るとクラヴィスさんは片膝をつき、恭しく頭を垂れていた。


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