My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「そして彼は“街を消す”そう言いました」
穏やかだか確信に満ちた声音でクラヴィスさんは続けた。
「彼はあのラグ・エヴァンスではないですか? そして、アルと呼ばれている貴方は、彼を育て上げたと言われるアルディート・デイヴィス教師。……そうですね?」
ラグの名が有名であることは知っていたけれど、初めて聞くアルさんのフルネームも同じように知られていたことに驚き、私は傍らの彼を見上げた。
彼は参ったなという顔でその額を掻き、
「あー、コレまたあいつに怒られちまうな」
私を横目で見下ろし、そう苦笑した。
「――そして、」
その声に視線を戻しギクリとする。クラヴィスさんがなぜか私の方を見つめていた。
「貴女は先ほどセイレーンだと言っていましたが」
マズイ……!
そういえば先ほどドナとの会話の中で大声でセイレーンだと公言してしまった。
「え、えっと、私は」
アルさんがストレッタの術士だとわかってしまった今、私が銀のセイレーンだということは絶対にバレてはいけない。
「あぁ、この子はストレッタとは無関係だぜ」
アルさんが私の肩にポンと手を乗せ、助け舟を出してくれた。
「ただ捜してる奴が偶然同じだったんで、今は一緒に行動してるけどな。それにセイレーンっつっても、残念ながらストレッタに入れるレベルじゃあ無いしな」
「そ、そうなんです。本当に恥ずかしいくらい下手で……」
「そうですか……。いえ、ただ殿下を捜している間に良からぬ噂を耳にしまして」
顔が引きつりそうになるのを必死にこらえる。――ま、まさか。
「あの銀のセイレーンがランフォルセに現れたそうですよ」