My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

「――ぎ、銀のセイレーンがですか!?」

 私は思わず大声を出していた。

「本当なら大変じゃないですか!」
「ホントだな。それマジな話なのか?」

 アルさんも私の猿芝居に乗ってくれた。

「あくまで噂ですから、私にも真偽はわかりません」
「そうですよね……。ただの噂だといいなぁ」

 わざと怯えるように顔を伏せる。――今、酷い顔をしている自覚があった。と、

「そうですね。私もそう信じたいです」

そう言いクラヴィスさんの視線がようやく私から外れた。
 私が内心激しくホッとしていると彼は再びアルさんに顔を向けた。

「アルディートさん。貴方を世界有数の術士と見込んでお願いします。私達が城に戻るまでの間、ツェリウス殿下を護衛していただけませんか?」
「ちょっと待てよ!」

 アルさんが返事をするより早く王子が声を上げた。

「僕はまだ帰るなんて言ってないぞ!」

 ……失礼だけれど、もはや意地を張っているようにしか見えなかった。

 彼の気持ちもわかる。
 城に戻れば彼の決意が全部無意味になってしまう。
 それに此処には――。

「帰れよ!!」

 突然、鋭い怒声が頭上から降って来た。
 振り仰ぐとツリーハウスの窓からドナが顔をのぞかせていた。
 驚く王子に向かって彼女は言う。

「その人はお前を迎えに来てくれたんだろ? いい加減子供みたいに駄々こねるのやめろよ!」
「ぼ、僕は」
「それに王様が病気だって? お前にとっては親父だろ? アタシはな、親不孝もんが大っ嫌いなんだよ!!」
「ドナ……」

 王子の声が急に情けないものに変わった。
 大嫌いと言われたことが余程ショックだったのだろう。

 しかしドナの厳しい言葉はそれで終わらなかった。
 皆が見守る中、ドナは一呼吸置き王子に告げる。

「これ以上お前がいると迷惑なんだ」
「――っ!」

 はっきりとした拒絶の言葉に、王子は今度こそ言葉を失った。
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