My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3


「わぁー!」

 幸いそれからモンスターに遭遇すること無く街に入ることが出来た私たち。

 思わず声が出てしまったのは、建ち並ぶ家々が水色やピンク、黄色などとてもカラフルだったからだ。
 そして道行く人達も色鮮やかな服を身に纏い、しかも皆露出度が高く色々な意味で目がチカチカした。

 元々薄着なセリーンはともかく私とラグは完全に浮いてしまっていたが、常に観光客で賑っている街なだけあってすれ違う人達に特に気にする様子はなかった。

 この島も、海を遠く隔ててはいるが一応クレドヴァロール王国の領土らしい。しかし島民にその意識は薄く、昔から島独自の文化や産業によって発展してきたのだという。
 今にも陽気な音楽がどこからか聞こえてきそうな、まさに観光地に相応しいとても明るい雰囲気の街だ。

(なのに……)

 そんな楽しげな街中を、ラグは相変わらずの険しい表情で足早に進んでいた。
 露店に少しでも目を奪われていたらその間に置いていかれそうだ。私は少し息を上がらせながら声を掛ける。

「アルさん、どこにいるんだろうね。チョコを探しに行ったってことは、お菓子屋さん?」
「ティコだ」

 視線を巡らせながらもラグはすかさず指摘してきた。

「あ、つい……。あのね、私の世界でもティコと似たお菓子があって、それがチョコっていうの」
「そうなのか。ティコは正式にはティコリートというんだ」

 そう教えてくれたのはセリーンだ。

「チョコもチョコレートっていうんだよ。やっぱなんか似てるね!」
「フェルクレールトでテテオの実の農園があったのを覚えているか?」
「うん、甘いお菓子になるっていう……あ、もしかしてテテオの実がティコになるの?」

 私が少し興奮気味に言うとセリーンが頷いた。――やはり似ている。チョコレートもカカオの実から作られる。

(じゃあ、アルさんがさっき食べてたティコもフェルクの皆が頑張ったから出来たんだ)

 ライゼちゃん達フェルクの皆の顔が浮かび、知らず笑顔になっていた。

「私も食べてみたいなぁティコ」
「前に食べただろうが」

 ラグに言われきょとんとする。するとこちらは見ずに彼は苛ついたように続けた。

「ルバートでやっただろ」
「……あ!」

 そうだ。ルバートで確かに私はラグからチョコをもらった。――あれがティコ!
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