My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
9.暗殺者
そして。
私とアルさんは今一度街へ向かっていた。ラグとセリーンを連れてくるために。
自警団との諸々の問題より、暗殺者の方を最優先に考え急ぎ行動することにしたのだ。
「自警団の方は、私がなんとか出来るかもしれません」
しかしユビルスの暗殺者に対しては自分は何も出来そうにないと、王子の従者であると共にクレドヴァロール王国の騎士であるクラヴィスさんは言った。
ドナはその間モリスちゃん達に暗殺者のことを悟られないよう、いつも通り夕飯の支度をしていた。アルさんの助言で、灯りは極力小さくするようにして。
もしその暗殺者がアルさんやラグと同じように空を飛べたなら、この場所がバレてしまうからだ。
空を飛ぶという術は実はとても難易度の高いものらしく、もしそこまでの力がある術士だとしたら厄介だとアルさんは言った。
――その話し合いの間、王子は俯いたまま一度も口を開かなかった。
ラグがこの話を呑んでくれたなら、すぐさま王子と共にクレドヴァロールに発たなくてはならない。この場所を守るために。
(王子、大丈夫かな。ドナも……)
上空で目を瞑り二人のことを考えていたときだ。
「なんだ、あれ」
アルさんが怪訝そうな声を上げた。
ギクリとする。
「ど、どうしたんですか?」
――なんだかとても嫌な予感がした。
「赤い。……あれは、詰所が燃えてる!?」
「!?」
私は強風の中、目を見開いた。
明かりが点々と灯る街の中、確かに一際赤く見える場所があった。
そこは、先ほどまでいた詰所に間違いなかった。
「カノンちゃん、目瞑って耳塞いでて!」
「は、はい!」
返事をした途端、風が更に強まった。耳を塞いでいてもその轟音は凄まじく、言われた通りにしていなければ鼓膜が破れていたかもしれない。
(ラグ、セリーン、どうか無事でいて……!)