My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
そして数秒後、私たちは詰所のある大通りに降り立った。
誰かに気付かれる心配は無かった。詰め所前は昼間の決闘騒ぎ以上の人混みで、その誰もが燃え盛る炎を見つめていたからだ。
二人の姿を捜しながら私たちは群衆に駆け寄る。
「何があったんだ!」
アルさんはすぐさま手近に居た人に声をかけた。と、振り向いた人物は見知った顔だった。
「あ? なんだ、昼間のティコ好きの兄ちゃんじゃないか」
この街で最初に入ったあのピンクの雑貨屋の主人だ。
「いやなぁ、俺も今来たとこなんだが、なんでも急に炎が上がったらしくてな」
「中に人は!?」
昼間とは別人のように真剣な表情のアルさんに主人は一瞬気圧されたようだった。
「さ、さぁ。だが、ラルガがいないって若い奴らが騒いでいたが」
「ラルガ?」
「自警団の団長だ」
――おそらく、あの髭の男に違いない。
(あの人が中にいるとしたら、二人もまだ中に……!?)
人垣の向こう、赤々と燃える炎に目を向ける。――あんな中にいたらまず助からない。全身に震えが走った。
「水は! なんで誰も消そうとしないんだ!?」
「いや、それがもう何度も水はかけてるんだが全く消えなくてな。だが不思議と他に燃え移ることは無いようなんでこうして見守るしか――」
アルさんは言葉の途中で主人に背を向け走り出した。私はそれを慌てて追い掛ける。
――確かに、これだけの勢いで燃えているのに、すぐ隣の家が無事なのは奇妙だった。