My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「貴様! その可愛くもなんとも無い姿で私に触れるな!!」
「うるせぇ! 黙れ!!」
キーンと耳鳴りのする中、そんな二人の怒声が聞こえ私はどうにか薄目を開ける。
ラグが私とセリーンを両脇に抱え夜空を飛んでいた。
ブゥの翼がいつものポケットから片方だけ出てしまっていて、ラグがどれだけ焦っていたのかがわかる。
眼下に目を向け唖然とする。今の今までいた詰所が再び炎に包まれていた。その色は夜の闇に恐ろしく映えた。
「アルさんは!?」
「あいつはあそこだ」
顎で指した先を見ると、アルさんがラルガさんを抱え同じように宙を飛んでいた。
ほっとして、続けて訊く。
「あ、あの子は?」
辺りを見回すがその姿がどこにも見当らない。
「わからねぇ」
イラついた声。
まさかあの炎の中ということはないだろう。
と、街道に集まっていた大勢の人々が皆散り散りに逃げていくのが見えた。今度の炎は周囲の建物までも襲っていたからだ。
私はラグを見上げ早口で伝える。
「ラグ、あの子、例の金髪の彼を暗殺しに来たみたいなの!」
「暗殺?」
「彼ね、王子様だったの、クレドヴァロールの」
「!?」
ラグとセリーンが驚く。
「それで、あの子は暗殺者らしくて」
「そういうことか。くそ、また面倒なことに……」
ラグが毒づいた。その時。
「おい。あれは、さっきの子供ではないか?」
セリーンの声にはっとし視線を向けると、闇の中に小さな光がちらちらと動いているのが確認出来た。
更に目を凝らして見えてきたのは黒い人影。――あの少年に間違いない。