My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
10.守戦
アルさんがすぐさま同じか、それ以上の速度で後を追う。
「ラグ! 私たちも……っ!」
早く、と言う前に顔に当たる風が強まり思わず目を瞑った。
「――おい、アルが言っていた仕事ってのはなんだ」
強風の中そう訊かれ、瞬間躊躇したが私はアルさんが王子の護衛を引き受けたらしいことを簡潔に話した。
案の定聞こえてきた盛大な舌打ち。
「降りたらオレはまたガキの姿だ。アルがなんとかするとは思うが、お前は何もするなよ」
「う、うん」
「安心しろ。あの子は私が誠心誠意護――」
大真面目なその声を遮るようにして風の音が更に強まった。
――山を燃やすのは止めたと言ったルルデュール。
もしかしたら今度はツリーハウスを燃やすつもりかもしれない。あの詰所の様に。
(お願い、アルさん……!)
腕で風を避けながら祈る思いで二人の後ろ姿を追う。
アルさんの強さは知っているのに、不安で仕方なかった。
空を飛べるほどの力を持った術士だとしたら厄介だと彼は言っていた。
暗殺者としてこの島に派遣された少年。彼は一体どれ程の力を持っているのだろう。
このドクドクという心臓の音はきっとラグにも伝わってしまっているに違いなかった。