My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
しかし、ストレッタの教師だという彼はやはり速かった。
ツリーハウス目前で並んだ二人を見て小さく歓声を上げる。――が、次の瞬間二人の身体がそのままの勢いでぶつかり合った。
「!?」
直後、反発するようにルルデュールの小さな身体が吹っ飛び闇に消えていくのを見て思わず悲鳴を上げる。
あんな落ち方をして、普通ならタダでは済まない。――普通なら。
アルさんはそのままツリーハウスを護るように大樹の前に降り立った。
少し遅れてラグもアルさんに並ぶように降り立ち、私たちから手を離した。
「アルディートさん!?」
風が霧散し、背後から聞こえたのはクラヴィスさんの驚いた声。
彼も大樹の前でツリーハウスを護っていたのだろう。
「クラヴィス、悪ぃがこのおっちゃん、ちょっと見ててくれ」
アルさんはそう言いながら彼の前に抱えていたラルガさんを下ろした。
初め訝しげだったクラヴィスさんもラルガさんの様子を見てすぐに察したように真剣な顔つきになった。
「傷はほとんど癒えてる。じきに目を覚ますはずだ」
「わかりました」
「それと――」
「カノン!?」
頭上からドナの声がして私は焦ってツリーハウスを振り仰ぐ。おそらくは風の音で気付いてしまったのだろう。
「ドナ! 出てきちゃダメ!」
私が声を上げるのとほぼ同時、王子も同じ窓から顔をのぞかせ更に焦る。
今一番姿を見せて欲しくないのはルルデュールの標的であるツェリウス王子だ。
だが二人の視線は私の隣、小さくなっていくラグに釘付けだった。
そして丁度そんなときだ。
「まったく、ひっどいなぁ~」
子供の声が響いた。