My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
ぎくりとしてそちらに視線を向けると闇の中に小さな赤い光が揺れていた。
そして次に聞こえてきたのはあの特徴的な笑い声。
「ふっふー。まさかぶつかってくるとは思わなかったよ」
姿を現したのは口元に不気味な笑みを浮かべた少年だった。
焦って頭上を見上げるが二人の姿はもう無かった。おそらく彼らも今最悪な状況だと気が付いたのだろう。
灯りがついているということはおそらくはまだ起きているだろうモリスちゃんやトム君達は平気だろうか。この状況を知ってしまったら、モリスちゃんは特にまた恐慌状態に陥ってしまうに違いない。
金属音に気付いて視線を下ろすとクラヴィスさんとセリーンが剣を手にしていた。
だがそれを制するようにこちらに軽く手を振り、アルさんがルルデュールの方へ歩いて行く。
「ラグ、上着貸せ」
途中小さく発せられたアルさんの短い言葉に、ラグはすぐさま腰に巻かれた上着を外し彼に投げ渡した。
その上着は先ほどのアルさんの術のせいでまだぐっしょりと濡れている。
きっと彼はその水気をまた術に使うつもりなのだろう。
ルルデュールがまた炎の術を使うつもりなら、それに対抗出来るのは先ほど見た水の術しかない。