My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
近づいてきたアルさんに気付き、ルルデュールが足を止めた。
「おじさんのおかげで、ボク危うく死んじゃうところだったよ」
「そんなんじゃ死なないだろう、お前さんは」
アルさんの言う通り、ルルデュールは全くこたえていないように見えた。
「それに言ったろ、お前さんの仕事を阻止するのが俺の仕事だって」
そこでアルさんも足を止める。――二人の距離、ざっと3メートル。
少年が大げさに溜息をつく。
「ホント、面倒くさいおじさんだなぁ」
「だーかーら、お兄さんだっつの!」
緊張感の無い会話。
でも二人を中心にこの場の空気がピンと張り詰めているのがわかって、一瞬たりとも目が離せなかった。
「で、お兄さんからちょっと提案なんだけどさ、お前さん一旦ユビルスに戻ったらどうだ?」
「なんで」
「ユビルスもまさかストレッタの術士が絡んでるなんて思わなかっただろうからさ。一旦戻ってこのこと報告した方が良くね?」
「……なにそれ」
その声に微かに怒気がこもる。
「ボク一人じゃ力不足だって言いたいの?」
「俺さ、ストレッタで教師やってんだわ。お前さんみたいな素質のある術士を何人も育ててるし、育ててきた」
アルさんは生徒を諭すように続ける。
「だから正直、お前さんみたいな優秀な若い芽を摘み取りたくないんだよな」
「……」