My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
ルルデュールはすぐには答えない。
ごくりと喉が鳴る。――果たして少年は説得されてくれるだろうか。
出来ることならアルさんとこの少年が戦うところなんて見たくない。
だが、
「ふっふー、若い芽ね~。完っ全に子供扱いだよねぇソレって」
肩を震わせ少年は笑う。そして。
「あのさ、これでもボク、20歳過ぎてるんだよね」
「へ?」
「え?」
アルさんの間の抜けた声と自分のそれとが重なった。
「――だからさぁ。ボク、子供扱いされるの大っ嫌いなんだよね!!」
ルルデュールが怒鳴り声を上げた直後、凄まじい突風が襲った。
咄嗟に顔を庇い足を踏ん張ったが間に合わず、私は倒れるようにしてその場から数歩後ずさってしまった。
その猛烈な一迅の風は草木の悲鳴と共に轟音を立て通り過ぎて行った。
恐る恐る目を開けてすぐ。
「大丈夫だったか!? 危うく吹き飛ばされるところだったな!」
「吹き飛ばされるか! 離せアホーー!!」
場違いなその甲高い怒声に視線を向けると案の定すぐ隣でセリーンが小さなラグを庇うように抱きしめていた。
確かに今のラグなら吹き飛ばされはしなくとも転倒はしていたかもしれない。
そんないつもの二人の姿に少しだけ緊張が解れるも、直後、頭上から激しい泣き声が聞こえてきてギクリとする。
(――モリスちゃん!?)