My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
すぐさまツリーハウスを見上げる。瞬間、今の風で家が傾いてしまったのではと思ったのだ。
幸い家は無事だったが、おそらく今の突風による凄まじい音と揺れで驚いてしまったのだろう。
「ひゅー、すっげぇ! そっかそっか、ユビルスがお前さんを一人でよこしたワケがわかったぜ」
アルさんの変わらず明るい声に視線を戻す。
彼もルルデュールも、先ほどの場所から動いていなかった。
そして少年の言葉を思い出す。
(確か20歳過ぎてるって、どういうこと……?)
隣で未だ暴れているラグの存在がなければとても信じられなかっただろう。
しかしこれまでのルルデュールの言動、そしてあの恐ろしい目つきを思い返すと大人だと言われた方が納得出来た。
彼は暗殺者だ。相手を油断させるために今だけ子供の姿になっているのかもしれない。
ルルデュールはアルさんを冷たく一瞥すると、ふと顔を上げた。
「ねぇ~! ツェリウス王子~! そこにいるんでしょー?」
ツリーハウスに向かい、まるで友達を遊びに誘うかのように大声を張り上げたルルデュールに皆が息を呑んだ。
じり、と足を鳴らし剣を構えたクラヴィスさんにセリーンがおい、と小さく声を掛ける。
ルルデュールの楽しげな声が続く。
「今すぐに出てこないとー、そこにいるみ~んな、殺しちゃうよ~?」
そして人を小馬鹿にしたようなけらけらという笑い声。
モリスちゃんの悲鳴のような泣き声が更に大きくなった気がした。
「すみません、その方お願いします」
「え?」
疑問の声を上げたときにはもう、クラヴィスさんは走り出していた。