My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
でもクラヴィスさんはアルさんに支えられながらゆっくりと体を起き上がらせた。意識はあるようでホッとする。
そんなクラヴィスさんに小さく声を掛け、アルさんは一人立ち上がった。
そして再びルルデュールをまっすぐに見据える。
「これ以上、人を傷付けんな。後悔するぞ」
その声はこれまでの彼のものとはまるで違い、真剣そのものだった。
しかしルルデュールはまたも声を上げて笑う。
「ふっふー、なーんでボクが後悔するのさ。意味わかんなーい」
「――おい、大丈夫か?」
ふとセリーンの声がして見ると、ラグがその小さな体を小刻みに震わせていた。
「ラグ?」
私が小さく声を掛けた、丁度そのときだ。
ピイィーー!
あの笛の音が鳴り響いた。
はっとしてツリーハウスを見上げ視界に映ったのは、こちらに飛び降りてくる金色のモンスター。
(ツェリ!!)
優雅な身のこなしで着地した彼はそのまま大地を蹴り、自分を殺しに来た暗殺者の元へと向かう。
一瞬見えた彼の表情は怒りに満ちていて――。
「いけません!!」
クラヴィスさんの悲鳴にも似た叫び声。しかしツェリは止まらない。
あっという間に距離を詰めたツェリは地鳴りのような咆哮を上げ、ルルデュールに襲いかかった。――直後、二人の間に真っ赤な火柱が上がった。