My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「――っ!!」
突然の強い光に目がくらみ、瞬間ツェリの姿もルルデュールの姿も見えなくなる。
「水を此処に……!」
アルさんの声。そして。
「ツェリーー!!」
頭上から絶叫が響いた。
振り仰ぐとドナが窓からこちらに身を乗り出していた。
今にもそこから飛び降りてきそうな彼女を止めようと口を開くが、しゅうしゅうという激しい音に気付き視線を前方に戻す。
視界に映ったのは炎と水とが渦を巻きながら絡み合う、見たこともない神秘的な光景。
術によって生み出された炎と水とが互いを消し去ろうとしているのだろう、凄まじい音と共に白い煙がもうもうと空へ立ち昇って行くのを呆然と見守る。
(これが術士同士の戦い……)
やがて炎は煙を残して消え去り、その役割を終えた水も視界から消えてしまった。
「ふぅ、あっぶね~」
アルさんが額を拭い安堵の声を漏らした。
はっと我に返りツェリの姿を探す。
先ほどと同じ場所に少年の姿。
そして彼から少し離れた場所にぶるぶると身体を震わせ水気を払うツェリの姿を見つけ私も激しく安堵する。
おそらくあと少しアルさんの反応が遅かったらツェリはあの火柱の中で……そう思ったら血の気が引いた。