月夜に笑った悪魔


「思わずその男のことじっと見てたら声かけられてさ。美鈴のことたくさん聞かれて、最後にはこれ渡すようにって頼まれたの。
……美鈴、あんたあの男と関係切れてないのに一条様と付き合ってんの?」


鋭い目つきで睨まれる。
私は……声が出なくなった。



話を聞くのにいっぱいいっぱい。
和正の顔を思い出して、胸が痛くなる。



「ちょっと顔がいいからって調子に乗らないで。
一条様がいつまでもあんたのことを好きでいてくれると思わないほうがいいよ」


強く言うと、勢いよくドアを開けて出ていく由美。

1人になると、私はその場に座り込んだ。



……和正は、きっと知らない。
私が、あの浮気現場を見たことを。


だから、和正は私のことを探してる……?
私に、会いたいと思ってる……?




じっと見つめる手紙。


彼の文字を見るだけでも、胸が痛くてたまらない。
心が不安定になる。




私はその手紙をここで読む気にはなれず、鞄の中へとしまってすぐに屋上を出た。



中へと入って、急いで階段をおりて。
廊下を走って向かったのは、社会科準備室。

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