月夜に笑った悪魔


そう思ったあと、思い出したこと。




『一条様がいつまでもあんたのことを好きでいてくれると思わないほうがいいよ』


由美の、さっきの言葉。


……それは、わかってるつもり。


本当にいつ、暁の気持ちが離れるかわからない。
やっぱりなんで私のことが好きなのかわからないし、好きでいてくれる今が奇跡のようなものなんだよな……。





暁が起きたら、昨日のことはちゃんと謝ろう。
ヒールで足踏んだことと、今朝の態度が悪かったこと。

……まぁ、暁のほうが私にひどいことしたけどさ。



今でも思い出すとムカつく。


眠っている彼を見ていれば、つい出てしまう手。
起きたら謝ろう、って決めたばかりなのに。



頬でも引っ張って睡眠妨害してやろう。


せめてもの仕返しにそう企んで頬へと触れようとしたら──急に彼の目がぱちっと開いて。

彼は、私の人差し指をがぶり。






「っ……!」


強く噛まれ、痛みが走る。

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