月夜に笑った悪魔
お詫びって……ドーナツと、タピオカ?
これ、暁が買ってきたの……?
「女はこういうのが好きだって吉から聞いたけど、気に入らなかったら今度なんかちがうの買ってくる」
膝の上に置かれた、箱と袋。
……昨日のこと、ちゃんと悪いと思っていたのか。
それで許してもらおうと考えていた、と。
ドーナツとタピオカ、暁が並んで買ってきたと思うとなんか笑える。
一条組の若頭が、わざわざ甘いもの買いに行くって……。
「ふふっ」
思わずこぼれる笑み。
想像してしまえば堪えることはできなかった。
「おもしろいから今回は許す。でも、もう二度とあんなことしないって約束して」
昨日されたことは本当にひどいし、ムカつくけど。
なんか、もう許してもいいかなって思った。
……食べ物で許すって、私って単純なのかも。
まぁいいか。
いつまでも怒ってても疲れるだけだし。
「約束する。今度なんかあったらすぐ助けてやるよ」
確かにかえってくる返事。
今度なにかあったらって……もう、危険なことはないと思いたいけど。