月夜に笑った悪魔


私は鞄の中から今朝奪ったボイスレコーダーを取り出して。


「あとこれは消して」


と彼に渡した。


消すだけでいい。
消すだけでよかったんだけど、彼はなんと……バキッとボイスレコーダーを折って破壊。


そこまでしろとは言っていないんだけど、「これでいい?」と聞いてくるからこくこくと頷いた。



ボイスレコーダーを素手で破壊するなんて、おそろしい男だ。
ゴリラ並みの力を持っているんじゃないか。




「ここ座れよ」


破壊したボイスレコーダーを彼は自分のポケットの中へとしまうと、ソファの隣をぽんぽん叩く。

私は隣に腰を下ろして。


「ドーナツ食べるね」


お腹が今にも鳴りそうで、我慢できなくなってドーナツの箱を開けた。



箱の中には、美味しそうなドーナツが6つも。
可愛い動物の顔が書いてあるもの、チョコがたっぷりついているもの、クリームが中に入っているもの、種類はたくさん。


私はその中から1つ、動物の顔が書いてある可愛いドーナツを選んで。
いただきます、と手を合わせてからぱくりとひと口。

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