月夜に笑った悪魔
猫の顔が書いてあるドーナツ。
可愛くて食べるのはもったいないような気がしたけど、遠慮なく食べた。
可愛くて、美味しい。
写真撮ってから食べればよかったな、なんて食べたあとに少し思ったり。
まぁもういいか。
「はい」
ドーナツを食べながら暁にも箱を差し出す、が。
「…………」
彼はなぜか無言で私を見てくる。
暁も甘いものを好きだと以前言っていたから、食べると思ったんだけど。
今はそういう気分じゃないのかな?
でも私、あと5個も食べられないよ?
冷蔵庫もないから放課後までここに置いといたら悪くなっちゃいそうだし……。
2人で食べるしかないのに!
タピオカも、お弁当もあるのに!
1人で食べながら考えていれば──突然、目の前に暁の整った顔のドアップ。
彼は、私が持っているドーナツをぱくりと食べた。
それも、大きなひと口。
「っ!!」
急な出来事で、心臓がドキッと大きく跳ねる。