月夜に笑った悪魔
「うふふっ」
急にスキップがしたい衝動に駆られて、スキップして前に進む。
でも、体がふらふらしてまっすぐに進めない。
自分で自分が制御不能。
「おい、危ねぇだろ」
ガシッと腕をつかんで引き止められた。
聞こえてくるのは、さっき背後でした声と同じ。
振り向けば、そこにいたのは──長身の黒髪の男性。
高そうな黒服に身を包んでいるから、一見真面目そうな人かと思いきや……
耳にはシルバーの桜のピアス、右腕にはバングル、緩められたネクタイが目に入って。
真面目なのかよくわからない。
それにしても……整っている顔。
イケメンというものだ。
背が高いし、年上かなぁ。
「酒飲んだのか」
ぼうっと見つめていれば、私がさっき飲み干した缶を手からするりと取られた。
お酒?
私が飲んだのはジュースだよ?
「お兄さん、おもしろいこと言うね~」
ふふっと笑って、私はすぐにまた前を向いてスキップしようとした、が。
つかんだ腕を離してくれないお兄さん。