月夜に笑った悪魔






どうせ会うこともないんだから、何度も捨てようかと思った。
ぐしゃぐしゃに丸めて、部屋に投げ捨てて……開いて、やっぱりまた丸めて。


破こうとしても、手がとまって破けない。






結局、私は……和正からの手紙を読んでしまった。


──けど、読み終わったあとに後悔。



読まなければよかった。
……すぐ捨てればよかった。




手紙に書かれていたのは、謝罪。
私がいなくなって、浮気に気づかれたと和正もわかったらしい。


何度も謝罪の言葉が書いてあって、それから……。




“失ってはじめて、本当に大切なものに気づいた”
“戻ってきてほしい”
“もう一度俺にチャンスをくれないか”
“美鈴の都合のつく日でいいから家に来てくれないか。一度しっかり話したい”


と、便箋5枚に和正の想いが書いてあった。



……なんて自分勝手。
そんなことを思うなら、はじめから浮気なんてしないでほしい。


そうすれば私だってこんなに傷つくことも、泣くこともなかったのに……。


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