月夜に笑った悪魔
*
どうせ会うこともないんだから、何度も捨てようかと思った。
ぐしゃぐしゃに丸めて、部屋に投げ捨てて……開いて、やっぱりまた丸めて。
破こうとしても、手がとまって破けない。
結局、私は……和正からの手紙を読んでしまった。
──けど、読み終わったあとに後悔。
読まなければよかった。
……すぐ捨てればよかった。
手紙に書かれていたのは、謝罪。
私がいなくなって、浮気に気づかれたと和正もわかったらしい。
何度も謝罪の言葉が書いてあって、それから……。
“失ってはじめて、本当に大切なものに気づいた”
“戻ってきてほしい”
“もう一度俺にチャンスをくれないか”
“美鈴の都合のつく日でいいから家に来てくれないか。一度しっかり話したい”
と、便箋5枚に和正の想いが書いてあった。
……なんて自分勝手。
そんなことを思うなら、はじめから浮気なんてしないでほしい。
そうすれば私だってこんなに傷つくことも、泣くこともなかったのに……。