月夜に笑った悪魔



思いっきり泣いた、深夜3時。


隣の部屋に聞こえないように、できるだけ声を押し殺してたくさん泣いた。


そして泣いたあとは……夏の気温と水分を出し切ったせいで、ひどくかわく喉。




……水飲みたい。
けど、泣いたあとだからひどい顔してそう……。


……誰かに会ったらやだな。

……でもこんな時間じゃ誰にも会わない、かな。
……誰にも会わないことを祈ろう。



冷蔵庫の中を勝手に漁るのはまずいだろうから、水道水でも飲もう。
それだったら飲んでもいいよね……。


気分転換も兼ねて行くことにし、私はゆっくり重い体を起こして。
音を立てないように、部屋を出た。



誰も起こさないようにして、水を飲んですぐ帰ろう。



忍び足でゆっくり歩く。
月明かりが照らしているから、電気をつけなくてもそれなりに見える。


まわりから見たら、私は不審者にしか見えないかもしれないけど。




縁側を歩いて、台所へと向かっていると──。






「……あれ?」


急に近くから聞こえてきた声に、びっくりして心臓が大きく飛び跳ねた。

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