月夜に笑った悪魔
とりあえず、怖い人ではなさそうでよかった。
「よ、よろしくお願いします」
その手をとって、握手。
近くでこの男性──蒼真さんのことを見て思ったが、この人も顔が整ってる。
暁も吉さんもすごい顔が整ってるし、この家にはイケメンしかいないんじゃないかと思うくらい。
「ところで、こんな時間にどうしたの?」
自分のひどい顔のことなんて忘れて、思わずじっと見ていれば聞かれる。
「喉かわいちゃって、水をいただこうと……」
「あぁ、そうなんだ。じゃあ一緒に行こうか」
「えっ」
まさかの言葉。
一緒に、なんて。
水飲むだけだよ!?
「可愛い美鈴ちゃんともっと話したいなって思って……だめかな?」
顔が近づいてきて、下から覗き込まれる。
お願いするかのような瞳。
イケメンの上目遣いは……すごい。
相手を黙らせて、首を横に振らせなくさせるんだから。
「……蒼真さんさえいいなら」
小さく返せば、目の前の彼はなんだかすごく嬉しそうに微笑んだ。