月夜に笑った悪魔
どうやって逃げようか頭を使って考えていれば、ふと伸びてきた蒼真の手。
熱い手が頬に触れて、近づく距離。
「美鈴ちゃんみたいな可愛い子なら大歓迎。本当に……どう?お金も好きなだけあげるから、暁じゃなくて俺と付き合おう?」
整った顔まで近づいてきて……危険を察知。
……これはやばい。
いい人じゃないかもしれない!
逃げようとすれば腰にまわされる手。
ぐいっと引き寄せられて、距離は近くなるばかり。
な、なになになに!?
何する気だこの男……!
「ものにもお金にも全く興味ないから大丈夫っ!!」
近づいてくる顔を、両手で強く押し返した──そのすぐあと。
「──蒼真」
この場に低く響いたのは、低い声。