月夜に笑った悪魔


2人で歩いて、立ちどまったのは私の部屋の前。
くるりと暁が振り向けば、目が合って……彼は私の顔を見ると、驚いたように目を見開いた。




……あ、そうだ。
泣いたから、私は今ひどい顔してるかもしれないんだ。


暁のこの反応を見るからに、それはかもじゃなくて確実。
蒼真に泣かされたって勘違いされちゃいそう……。



「ちがう、蒼真に泣かされたわけじゃなくて……!」


説明して、慌てて首を横に振る。
そんな私を見た彼は、


「……また元カレ?」


と、またすぐ言い当てる。


……なんでそんなに早くわかってしまうんだ。

どうせ嘘もつけないから、小さく頷いた。







「ちょっと昔のこと思い出しちゃっただけでね、本当にぜんぜん大丈夫だから!気にしないで……!」


頷いたあとは、気にさせないように笑顔を作る。
暁のことだから、そんなこと気にしないかもしれないけど。








笑顔を作り続けていればなぜか顔が近づいてきて、動けずにいれば──……唇に触れた、あつい熱。

< 119 / 615 >

この作品をシェア

pagetop