月夜に笑った悪魔
2人で歩いて、立ちどまったのは私の部屋の前。
くるりと暁が振り向けば、目が合って……彼は私の顔を見ると、驚いたように目を見開いた。
……あ、そうだ。
泣いたから、私は今ひどい顔してるかもしれないんだ。
暁のこの反応を見るからに、それはかもじゃなくて確実。
蒼真に泣かされたって勘違いされちゃいそう……。
「ちがう、蒼真に泣かされたわけじゃなくて……!」
説明して、慌てて首を横に振る。
そんな私を見た彼は、
「……また元カレ?」
と、またすぐ言い当てる。
……なんでそんなに早くわかってしまうんだ。
どうせ嘘もつけないから、小さく頷いた。
「ちょっと昔のこと思い出しちゃっただけでね、本当にぜんぜん大丈夫だから!気にしないで……!」
頷いたあとは、気にさせないように笑顔を作る。
暁のことだから、そんなこと気にしないかもしれないけど。
笑顔を作り続けていればなぜか顔が近づいてきて、動けずにいれば──……唇に触れた、あつい熱。