月夜に笑った悪魔


柔らかい感触。
ほんのり香る、いい匂い。


目の前には、暁の顔のドアップ。



一瞬、息をするのを忘れていた。






だって……キス、されたんだから。








遅れたように、激しく動き出す心臓。
一気に熱くなっていく体。



あ、暁の唇が、当たって、柔らかくて……。
き、き、キス、されて……!?


驚きの出来事に脳内はパニック状態。






「俺の前では無理して笑うんじゃねぇよ」


その声が聞こえた直後、私の体は熱い体温に包まれた。


背中にまわる手。
その手に力を込められて、彼の胸に顔を押しつけるかたちとなる。



さっきまでほんのり香っていたいい匂いが、今度はダイレクトに鼻腔に届く。



私は……今、暁に抱きしめられている状態。


「ほんとは何日も泣いて、泣きすぎて目ぇ腫らすくらい辛いんだろ。辛い時は俺に寄りかかれよ」




いつもより近くで聞こえてくる声に、ドキドキして体温は上昇するばかり。

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