月夜に笑った悪魔


……人によって、抱きしめ方はぜんぜんちがう。
腕の力の強さも、匂いも、体温も。


暁の力は強い。
そして、彼の腕の中は熱い。




優しい言葉をかけられてしまえば、少し気が緩んで……自然とまた溢れてくる涙。



我慢は得意なほうだと思っていたが、涙をとめることはできなかった。


……なんでだろう。
今まで、和正の前でいい子でいようといろんなことを我慢してきたはずなのに……我慢は得意なのに。
涙は次々溢れ出して、とまらない。



……本当に寄りかかっていいのかな。
暁の目の前で泣いてて、めんどくさい女って思ってない……?



そう思っても、やっぱり涙はとまらず。
彼のスウェットを強くつかんで、ただ涙を流した。





そうしていると、急に私の首元に垂れた冷たい雫。




「ひゃうっ」


びっくりして、変な声が漏れる。


なんの雫かと思って顔をあげて暁を見れば、思い出した。
彼はお風呂上がりなのか、髪が濡れていたんだ。


垂れたのは、その雫。


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