月夜に笑った悪魔
月夜に照らされた彼は



「そういえば、これ返すの忘れてた」


お昼休み、暁から渡されたのは桜の花びらが刻印された和柄のバングルと、スマホ。


これは以前の潜入捜査の時に取られたっきり返してもらってなかったっけ。


「ありがと」


私はそれを受け取って、スマホはスカートのポケットにしまって、バングルは腕につけた。





……これがあってよかった。
これで、少し勇気が出る。







──キーンコーンカーンコーン

校内に鳴り響くお昼休み終了を告げるチャイム。



「送る」


いつも、お昼休みが終われば教室まで私を送ってくれる暁。
彼が立ち上がって、続いて私も鞄を持って立ち上がって社会科準備室を出た。



「ねぇ、ちょっと手……握ってもいい?」


ちらりと隣にいる彼を見上げる。


こう言ったのは、もう少し勇気が欲しかったから。
これから、あるところに行くから……その勇気がもう少し欲しかった。



「珍しいじゃん」


彼は口角を上げながら、私に手を差し出す。
私はその大きな手に自分の手を重ねて、歩いた。

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