月夜に笑った悪魔
和正とよりを戻すために行くわけじゃない。
和正とちゃんと、お別れするため。
お別れして、前に進んで……暁とちゃんと向き合うために行く。
事前に、連絡はしてある。
2時間目の授業をサボって駅に行き、私は公衆電話から和正に電話をかけたんだ。
大好きだった人の電話番号は意外と今でも覚えているもの。
きっと……というか絶対、私はもうこの電話番号に電話をかけることはない。
和正はすぐに電話を出てくれて、私は一方的に『今日の14時、マンションで話がある』とだけ伝えて電話を切った。
和正は仕事があるだろうから来てくれるかどうかはわからないけど……浮気をして私を傷つけたんだから、今日だけは私を優先して来て欲しい。
学校からマンションまでは、徒歩20分くらい。
少しでも早く話を終わらせて、ぜったい放課後までには学校に帰ろう。
暁とさっき手をつないで力をもらったからか、不思議とそこまで緊張してない。
……頑張ろう。
腕にはめたバングルを強く握って、全速力でひたすら走った。