月夜に笑った悪魔


和正は、「わかった」と頷いたあと……。


「美鈴……改めて、本当にごめん!俺がしたのは本当に最低な行為だ……!謝って許されることじゃないと思うけど、本当にごめん!」


深く、頭を下げる。


「俺のこの最低な行為でどれだけ美鈴を傷つけたか……!本当にごめんっ!」


何度も謝る彼だけど……謝罪はもういい。
何度謝られたって、もう元には戻れないんだから。



「ねぇ、なんで……浮気したの?私以外にほかの女の人に魅力を感じたから?私に、なにか足りなかったからしたの?」


つぶやくような小さな声しか出なかった。
……これは、聞いておきたかったこと。


和正は、数秒間黙る。
言いづらいこと、だからだろうか。




「どんなことでも……ちゃんと言ってほしい」


目に涙が溜まってしまうけど、必死に堪えて付け足した。
すると……彼は、ゆっくり口を開く。


「初恋の人と偶然再会したんだ。同じ会社に入社してきて、話す機会があってさ……そこから話していくうちにまた惹かれていって……」


和正の浮気相手の顔は、まだ覚えている。
大人の雰囲気の、綺麗な女性だった。


……そっか。
初恋の人だったんだ。

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